病気(合併症)の原因・対策・治療
日本透析医学会が発表している「わが国の慢性透析療法の現状」では透析患者の死亡原因の第1位は「心不全」、第2位は「感染症」、第3位は「悪性腫瘍」、第4位は「脳血管障害」です。
そしてこれら合併症を予防・治療することが、元気な透析生活を維持ことにつながり、「合併症を今以上に進展させない。」を目標に、専門の総合医療機関と連携して取り組んでいます。
心不全
●原因
- (1)過剰な水分、塩分の摂取
- (2)腎性貧血
- (3)動脈硬化、石灰化
●対策
- (1)腎臓の機能が失われ尿量が減少すると、本来は尿として排出される水分、塩分は体内に残り高血圧を引き起こします。現在の尿量に応じた飲水量を設定し、減塩食(※)に努めましょう。また、設定された適切な体重(ドライウェイト)を維持することで心臓に負担をかけないようにしましょう。
※減塩食→およそ食塩1日7g程度 - (2)腎性貧血は心機能を障害し心不全の原因となります。適切な量の造血剤と鉄剤を投与し貧血管理を行います。
- (3)リン・カルシウムのコントロールが不良であると、心臓の弁・血管が石灰化し、血液が逆流する心弁膜症、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を生じ、心不全の重大な危険因子となります。タンパク質の摂取不足とならないように、リンの含有量の多い食材を知ることが重要です。
- (1)免疫機能の低下、透析不足(尿毒素の蓄積)
- (2)栄養(血糖コントロール)不良
- (1)一般的な予防策として、身体の清潔保持、手洗い、外出後のうがいを励行しましょう。また、透析不足(尿毒素の蓄積)になると、免疫細胞の機能が低下します。十分な透析効率を得ることで、尿毒素が蓄積しないようにします。
- (2)必要な摂取エネルギー量は理想的には標準体重と活動度で計算されます。つまり、患者様一人ひとりによって栄養バランスのとれた食事(※)の内容を考えることが大事です。
※栄養バランスのとれた食事→理想的にはエネルギーの三大栄養素の配分は糖脂:肪質:蛋白質=55:25:20%です。しかし、高齢の患者様はエネルギー不足に陥りがちです。当院ではしっかりカローリーを摂取していただき、血液検査の結果を見て、個別に指導しています。 - (1)過剰な体液と塩分負荷による高血圧
- (2)動脈硬化、石灰化
- (1)水分が体重増加量の主因とならないようにしましょう。
- (2)リン・カルシウムのコントロールが不良であると、心臓の弁・血管におこる石灰化は、頸動脈にも起こってきます。日常の食事の成分バランスを調査し、個々の患者様に応じた食事管理を行いましょう。
- (1)糖尿病や高血圧による下肢の血管の石灰化・硬化や血糖管理不良
- (2)運動不足
- (3)加齢による下肢の皮膚の乾燥・白癬・硬化など
感染症
●原因
●対策
当院では呼吸器感染症への対策として、肺炎球菌ワクチン・インフルエンザワクチンの接種を積極的に勧めています。
※肺炎球菌ワクチンについては平成21年から透析患者様への接種を導入し、平成26年夏には多くの患者様が2回目の接種を受けられています。
悪性腫瘍
●対策
1年に1回、胸部・腹部CT、上部消化管検査(胃カメラ)を施行することで、早期の発見に努めています。また、便に潜血反応のあった場合は下部消化管検査(大腸カメラ)を実施しています。
脳血管障害(脳出血、脳梗塞)
●原因
●対策
下肢末梢動脈疾患(重症下肢虚血)
足の末端部への血流が悪くなることにより(虚血)、冷感・痺れ・疼痛などが生じ、ひどくなると足の切断に及ぶこともあります。
●原因
●対策
当院ではフットケア専任の看護師が全透析患者様の足の血流・皮膚の状態に応じてフットケア計画を立て、基幹病院の血管外科と連携して「救肢」に取り組んでいます。